君の瞳に映る色


熱い、玲の掌が棗の手首を包む。

「お嬢様が、欲しい」

その言葉の意味を理解する前に、
布団から出てきたもう片方の手で
棗はベッドに引き寄せられた。

ゴクンと喉が乾いた音を立てる。

「ちょ、ちょっと!」

押し返しているはずなのに、
ズルズルと引き摺られるように
して棗はいつの間にかベッドの
上にいた。

足はベッドから
投げ出されたままで、
不自然に捩れた身体の痛みも
今は気にならない。

熱のせいか布団の中の玲の熱気に
つられるように棗の身体の温度も
上昇していく。

頭まで被さった布団のせいで
玲の姿はよく見えない。

掴まれた手と、腰に回された
腕から伝わる体温が余計に
はっきりと感じられる。

ぎゅっと玲の腕が棗を包む。
どこにこんな力があったんだろう
と、頭の片隅で考えながら
なんとかその身体を押し返そうと
試みる。

そうすると余計に玲の腕の力は
強くなった。

不意に身体の向きが変わって
一瞬で視界が明るくなる。

バサッと布団が落ちる音が
遠くで聞こえた。