慣れないおかゆを作り終えて
何とかキッチンから出ると、
棗は玲の傍に行った。
玲は冷却シートと氷枕に挟まれて
布団の中で丸くなっていた。
「おかゆ作ったけど」
声に反応して玲は薄く目を
開いた。
宙を漂っていた視線が棗の姿を
捉えて止まる。
「起きれる?」
微かに動く首は
YESかNOかわからない。
棗はおかゆをスプーンで掬うと
ふーっと息で冷ました。
ほんの少しの量を玲の口に
運んで食べさせる。
少しずつ、少しずつ、
何度もそれを繰り返した。
半分くらい食べたところで、
玲が首を横に振ったので
棗は器をテーブルに置いた。
買ってきた薬を飲ませる。
冷却シートに触れながら、
「何かほかにいる?」
と聞いた。
彷徨う視線と棗の視線が
ぶつかる。
「…お嬢様」
「ん?」
囁くような声に耳を寄せると、
額に触れていた手を掴まれた。



