君の瞳に映る色


できることなら家には
帰りたくない。
婚約もしたくない。

でもそれが許されない
わがままなのはわかっていた。


『どうなるか、じゃなくて
どうするか、じゃない?』


玲に言われた言葉がずっと
心の中にあった。

自由に生きることが無理なら、
せめて、今の自由を終わらせる
タイミングは自分で選びたい。


目を丸くして瑠璃が自分を
見ていた。

掴んでいた手を放すと瑠璃の手が
パタンと重力で落ちる。

二人の間に微妙な沈黙が流れた。

「……どこ?」

しばらくの沈黙の後に瑠璃が
口を開く。

「今どこにいるんですか?
この近くなんでしょ?」

背の高い棗を見上げながら瑠璃は
必死に話す。

「連絡しないから、場所くらい
教えてください。
わたしは執事でもなく友達として
心配してたんですけど!」

2、3度瞬きをした棗はフッと
笑いを漏らした。

「な、何で笑うんですか」

勢いよく言ってしまったことを
後悔しながら瑠璃は顔を
赤く染めた。