瑠璃の顔が悲しげに歪んだ。
「本気でそう思いますか?」
瑠璃の大きな瞳がまっすぐ棗を
見つめる。
「大切な人を心配するのは
当たり前だと思います」
「………」
曖昧に笑おうと思うのに、
笑いが引き攣った。
この子は何も知らない。
何もわかっていない。
柊が自分を探すのは、
“西園寺の娘”だからだ。
自分が必要なわけではない。
母にとっても必要なのは
“西園寺の娘”なのだ。
「…婚約が嫌なら、ご両親に
相談したらどうですか?」
棗の複雑な表情に瑠璃が
言葉を続ける。
棗は、違うのよ、と目を伏せた。
「そうじゃないの」
棗の言葉の意味が、
よくわからない瑠璃は
掴んでいた腕を緩めながら
ただ棗をじっと見ていた。
「とりあえず柊さんに連絡を…」
言いかけたところで今度は
棗が瑠璃の腕を掴んだ。
「しなくていいわ!」
カバンから携帯を出そうとした
手は途中で止まる。



