振り返ると見覚えのある小柄な
姿が見える。
その名前を呼び掛ける前に、
駆け寄ってきた瑠璃に両腕を
掴まれた。
「どこにいってたんですか!」
いきなりのことに棗は
目を丸くして固まっていたが、
「西園寺さんが行方不明だって
柊さんが探しに来たんですよ?」
と、言う瑠璃の言葉に、
あぁ、と納得した。
予想はついていたことなので、
そんなに驚きもない。
「今までどこにいたんですか」
畳み掛けるように質問しながら、
瑠璃は棗の服装が目に付いた。
軽装に財布を持っただけの姿に、
「誰かの家にいたんですか?」
と、聞いた。
この辺りは住宅街でホテルなど
1人で身を寄せるところはない。
棗は身を捩るようにして
瑠璃の手から逃れた。
「あなたには関係ないでしょ」
「…言いたくないなら
言わなくていいです。でも、」
瑠璃はまた棗の手を掴んで
自分の方へと向かせた。
「柊さんには連絡してください。
すごく心配してましたよ!」
瑠璃の勢いに圧倒されながらも
棗は溜め息を吐く。
「心配するのは当たり前よ、
柊はあの家の執事なんだから」



