朝ご飯の支度をしながら、棗は
起きてこない玲に目をやった。
いつもなら、物音で
目を覚ますのに。
いったん火を止めて、
玲に近づく。
「どうかした?」
その身体を揺すると
玲が顔をしかめた。
小さい呻き声を上げるだけで
起きてくる気配もない。
「ねぇ、大丈夫?」
ようやく棗の問いかけに玲は
薄く目を開いた。
ぼんやりと、宙を見ながら、
寒い、と呟く。
額に手を当てると、自分の
掌よりもはるかに熱い体温が
伝わってくる。
「風邪引いたんじゃない?」
棗の言葉には答えず、潤んだ玲の
瞳は遠くを見ている。
とりあえず、冷やすものをと
思って棗は立ち上がった。
冷蔵庫に氷などの類はなく、
棗は小さく溜め息を吐いた。
常備薬として棗が持ち歩いている
薬はただの頭痛薬なので、
風邪薬もない。
部屋の中を探すのは気が引けて、
棗は持ってきていたカバンから
財布を取り出した。



