髪を梳くように撫でると、
シャンプーの香りがほのかに
漂ってきた。
心臓の鼓動が少しずつ早くなる。
ゆっくりと頬へ手をずらし、
そして顎に沿って滑らせる。
薄く開いた唇に指先が
触れた瞬間、心臓が一際跳ねる。
びっくりして思わず棗は
手を引いた。
ドンドンと内側から誰か
叩いているような音が胸に響く。
静かな室内に鼓動が
うるさいくらいに聞こえる。
せわしなく瞬きを繰り返し、
少しの間棗は呆然となっていた。
自分のしていた事からも
目を逸らすように棗は玲に
背を向ける。
テーブルに置いておいたままの
コップが目に付き一気に飲んだ。
冷たいミネラルウォーターが
熱く火照った身体を冷ますように
喉の奥へ落ちていく。
浅い呼吸を落ち着かせる為に、
深く息を吸っては吐いた。



