「すっごい見られてるんだけど」
ようやく自分が玲を
凝視していたことに気付き、
カァッと頬が赤く染まる音が
頭に聞こえてきそうだった。
「…見られたくないなら
服を着ればいいでしょ」
殊更低い声で言って、
何事もなかったかのように
視線を本に戻す。
てことは見てたんだ、と
玲がクスクス笑った。
「見てないわよ」
「見たんだろ?」
「見てないったら」
「………」
玲の声が途切れたので
つい顔を上げると、笑顔で自分を
見つめる視線にぶつかる。
「こっち、くれば?」
玲が自分の隣のスペースを
ポンポンと叩いた。
まだ寝ないから、とはぐらかして
再び本に視線を戻す。
フランス語の単語を
目で追いながらも、それらは
日本語に変換されることなく
頭の中を通過していく。
音と気配で玲がベッドに
横たわったのがわかったが棗は
顔を上げなかった。



