君の瞳に映る色


ドアの開く音に棗はフランス語の
本から目を上げた。


今日は玲が棗の体調を気使って、
夕飯の支度から片づけまで
やってくれた。
先にシャワーも借りて
くつろいでいると、玲が風呂から
出てきた。

濡れた髪を上半身裸の状態で
拭きながら
玲はベッドに腰掛ける。

ちょうど目の前に座られて
嫌でも視界に入ってしまう。

風呂あがりで上気した身体を
本越しに伺いながら、昼間触れた
頬の感触を棗は思い出した。


あの時、どうしてか
触れてみたいと思った。


無意識に、気がついたら
吸い寄せられるように
頬に触れていた。

玲の紅茶色の目が見開かれて
自分を見ていた。

それで、我に返った。


答えの出ないまま
考え込んでいると、玲の笑い声に
頭が現実に戻ってくる。

「俺の裸に興味あるの?」

ぼんやりしていた焦点が急に
はっきりと玲の姿を映し出す。

言われた意味がわからずに棗は
2、3度瞬きを繰り返した。