君の瞳に映る色


勢いよく振り返ると、
目を丸くした玲の姿が映る。

「どうした?」

心配そうに聞かれて早鐘のような
鼓動が収まらないまま、
気配のしたほうに視線を向けた。

「誰かいたのか?」

様子のおかしい棗に玲が
質問を続ける。
棗は慌てて首を振った。

「あの、違うの。お手洗いに…」

あ、ゴメンと
玲はパッと棗の腕を放す。
ベンチにいなかったから
びっくりしてと玲は頭を掻いた。

ごめんなさい、と謝りながらも
神経は色の気配に集中する。

しかし気配はもう感じなかった。

何の気配かわからないだけに
気になったが、強い恨みや
悲しみの感情を
感じ取っただけかもしれない、
そう思うことにした。

第一その感情の正体を
知ったからといって
どうにもできない。

自分は無関係なのだから。


ようやく鼓動が落ち着いてきて
棗は小さく息を吐いた。