君の瞳に映る色

昼間のスーパーは割と穏やかな
感情が多かった。

「!」

その中に嫌な気配を感じ取って
棗は目を見開いた。

キョロキョロと辺りを見回す。

刺すような痛い、強い感情は
遠い位置からなのか、なんの
感情なのかははっきり見えない。

はっきり見えないほど
遠くだというのに、気配を
感じるのは今までに
経験したことがなかった。

心臓が嫌な音を立てて鳴る。

櫂斗のことが一瞬頭を過ったが
すぐにその考えは打ち消された。

ヴァンパイアの色ではなく
感じるのは間違いなく
人間の色だ。

はっきり掴めない感情の位置に
棗は視線を彷徨わせた。

何も知らない買い物客たちは
次から次へと棗の前を
通り過ぎていく。

棗は無意識に立ち上がっていた。
横切る色に遮られながら
感じる気配に神経を集中させる。

強く感じる方向へ歩き始めた時、
腕を不意に掴まれた。