君の瞳に映る色

玲は目を丸くして棗の行動を
見守っていた。

自分から触れてみた頬は温かくて
胸を高鳴らせる。
玲の目は棗の手と目を見るために
忙しなく動いていた。

その玲の表情に思わず
笑ってしまう。

「なっ……いってぇ!!」

玲が何か言いかけた時に棗は
頬をぎゅっとつねった。

玲が痛みに顔を歪めて、
肩に置いた手が緩んだ隙に
棗は立ち上がった。

「触らないでほしいわ、気安く」

広場の出口へと向かう棗を
玲はしばらく呆然と見ている。

「………なんだよそれっ!」

頬をさすりながら、
なんだよそれ、ともう一度
小さく呟く。

遥か遠くに歩いて行ってしまった
棗の背中を慌てて追いかけた。