君の瞳に映る色

しつこく自分を見ている玲を
一瞥すると、
「他の女と同じ扱いは嫌って
言ったのよ」
と強い口調で返す。

「わたしは歴史的名家、
西園寺の娘なのよ」

言いながら菖蒲の顔が
頭に浮かんだ。
母は自分に
失望していることだろう。

自分のことを探しているだろうか。
それとも探していないだろうか。

ずっと玲の家で
暮らしていくことなど
できないことはわかっている。

菖蒲と話をしないと
いけないことも。

「相変わらずなお嬢様発言だな、
ねぇ、じゃぁどうしてほしい?」

玲が背もたれに置いていた手で
棗の肩を抱く。
そうしてもう片方の手で棗の顎を
持ち上げて自分の方へ向かせた。

「………」

しばらく考えて、
棗は無言で玲に手を伸ばした。
そっと玲の頬に触れてみる。

こうして自分からこの男に
触れるのは初めてだ、
そんなことを考えながら。