言い合いながら棗は急激に
心が軽くなっていく気がした。
自分を飾ることも、西園寺の
娘ということも、玲の前では
必要ないし関係ない。
家柄から逃避するわけではない。
ただ純粋に時間が過ぎるのを
楽しく思えた。
感情の色が渦巻く色とりどりの
世界を見ても毎日の生活は
モノクロの寂しいものだった。
自分の時間を過ごす、
ただそれだけが
とても幸せに感じた。
その日の夕飯は
ありきたりだけど、と玲と
カレーを作ってくれた。
棗はというと生まれて初めての
ジャガイモの皮むきを手伝い、
歪な形にむかれたごろごろの
ジャガイモの入ったカレーを
2人で食べた。
解れた緊張が狭いベッドに
2人で入った時には
また蘇ってきたが、特に玲が
何かしてくる事はなく隣で寝息を
立て始めたので棗も安心して
眠りにつくことが出来た。