君の瞳に映る色

玲の彼女だよ、と適当な事を言う
絢に、違いますから!と訴えた。

笑いながら絢はまたリビングへ
戻ってくる。
何事もなかったかのように
座るので、どうやら帰る気が
ないらしいと棗は思った。

玄関でしばらく俊は待っていたが
絢が動く気がないのを察すると
中へ入ってきた。

栗色の髪は程よい長さで
カットされ穏やかな雰囲気の
漂う男だ。
大柄でがっしりとした体躯、
微笑を湛えた顔は落ち着いた
感じで絢より大人びて見える。

どうも、と再び挨拶をして
俊は絢の隣に座った。

自分の正面に座った俊を
棗はチラリと伺うように見て
声を上げそうになった。


正確には少し声を上げたのだが、
タイミングよく玲が
バスルームから戻ってきて
その声は掻き消される。

来てたのか、と玲は俊を見た。
よくあることなのか、さほど
驚いている様子もない。

絢連れて帰ってくれよ、と
溜め息混じりに言う玲の言葉に
俊は横目で絢を見る。

その視線に気付くと絢はプイと
顔を背けた。

なんでケンカしたんだ?と、
玲が聞くと、大した事じゃないよ
と俊は笑う。

「へぇ~、大した事ないんだ」

絢が低い声で言って急に
立ち上がった。