楽にしていいと言われ床に足を
崩して座って、棗はテーブルの
上を片付ける絢の手を見ていた。
シンプルに輝く結婚指輪が左手の
薬指に嵌っている。
棗はテーブルの下で櫂斗に
嵌められた指輪を外した。
ふと内側に文字が
彫ってあることに気付く。
―N.H.
H??
東條のTでも、櫂斗のKでも
西園寺のSでもない。
指輪に彫ってあるから
イニシャルだと思ったが
違うのだろうかと棗は
首を傾げた。
「なあに??」
片付けを終えた絢が
覗きこんできたので慌てて棗は
指輪をポケットに入れた。
ごまかすように笑顔で取り繕う。
絢は特に気にしていない様子で
また棗の隣に座った。
別にもうどうでもいいことだ。
もし返す機会が来るなら
指輪は櫂斗に返そうと
頭の片隅で思った。
自分がいなくなったことは
櫂斗たちにはすぐにわかる。
そうすれば西園寺家にも連絡が
行き母にも知れるだろう。
これまで淡々と菖蒲に従ってきた
棗としては思い切った事を
したなと今更になって考える。
母はなんと言うだろう。
生まれた時から母に逆らって
ばかりの自分がとても情けなく
やるせなく感じた。
崩して座って、棗はテーブルの
上を片付ける絢の手を見ていた。
シンプルに輝く結婚指輪が左手の
薬指に嵌っている。
棗はテーブルの下で櫂斗に
嵌められた指輪を外した。
ふと内側に文字が
彫ってあることに気付く。
―N.H.
H??
東條のTでも、櫂斗のKでも
西園寺のSでもない。
指輪に彫ってあるから
イニシャルだと思ったが
違うのだろうかと棗は
首を傾げた。
「なあに??」
片付けを終えた絢が
覗きこんできたので慌てて棗は
指輪をポケットに入れた。
ごまかすように笑顔で取り繕う。
絢は特に気にしていない様子で
また棗の隣に座った。
別にもうどうでもいいことだ。
もし返す機会が来るなら
指輪は櫂斗に返そうと
頭の片隅で思った。
自分がいなくなったことは
櫂斗たちにはすぐにわかる。
そうすれば西園寺家にも連絡が
行き母にも知れるだろう。
これまで淡々と菖蒲に従ってきた
棗としては思い切った事を
したなと今更になって考える。
母はなんと言うだろう。
生まれた時から母に逆らって
ばかりの自分がとても情けなく
やるせなく感じた。



