君の瞳に映る色

どうかした、と聞かれて首を
小さく横に振った。

「あ、それ、そのまましとけ」

マフラーを外そうとする棗を
玲が止める。
家の中よ、という棗の言葉を
遮って玲は、いいから、と
念を押した。

わけがわからない、そう思いつつ
棗は黙って紅茶の入ったカップに
口をつけた。

2人きりなら確実に何か言ったが
少なからず姉の絢に遠慮した。

その絢は興味津々に棗を横から
見つめている。

「棗ちゃんて何者?ハンターじゃ
ないんでしょ?」

玲に初めて出会った時も
同じことを言われた。
思い出して苦笑いしながら、
違います、と棗は答えた。

「絢、俺がまた今度説明
してやるから今日は帰れよ」

ドキッと心臓が脈打つ。

絢が帰ればこの部屋には玲と
2人になる。

棗はカップ越しに玲を見た。

「やだ、今日泊めて~??」

絢の言葉に玲は、はぁ?と
声を上げる。

「俊とケンカしちゃった」

舌を出しながら笑う絢に、
またかよ、と玲は呆れた。

食い下がる絢に首を縦に
振らない玲、事の成り行きを
黙って見守っていると、
棗ちゃんはいいでしょ?と
絢に話を振られた。