君の瞳に映る色

「あたしは結婚してるから。
妹2人とあの子はまだだけど」

絢は視線をチラリと玲に移す。

「みなさん、ヴァンパイア
なんですか?」

棗の言葉に絢は一瞬目を
丸くしたが次の瞬間には声を
立てて笑い出した。

「アハハ!当たり前じゃない。
犬から猫の子は生まれないわ~」

腹を抱えて笑う絢に真面目に
質問した棗は呆気にとられた。

「面白い子ね~。
何ちゃんだっけ?」

棗が口を開きかけると、ちょうど
玲が台所から紅茶を持ってくる。

「棗だよ、西園寺棗」

カップをテーブルに置きながら
玲が答える。

なんであんたが答えるのよ、とか
普段はお嬢様と言うくせに、
そんな言葉が喉まで出かかったが
棗は黙っておいた。

この男に名前を呼ばれるのは
不思議な気分だ。


…違うわ。

棗は一人頭の中で考えた。

自分を名前で呼ぶ人が
少ないのだ。
母ですらほとんど
呼ばないのだから。


ぼんやりしていると玲が
向かいから声を掛けてきた。