君の瞳に映る色

艶のある黒髪を玲は優しく
撫でた。
張り詰めていた緊張感が
解けていく。

言葉よりも先に涙が溢れた。

「…っ…怖か、った…」

途切れ途切れに言葉を紡ぐ棗を
玲は抱き寄せた。
温かい胸の中に顔を埋めると
玲の甘い香りがする。
細く見える玲の胸は思ったより
広かった。

微かに震える棗を抱き締めながら
玲はそっと髪に口付ける。
棗が落ち着くまでゆっくりと
棗の頭を玲は撫で続けた。



涙が止まっても玲の温かい手は
自分の髪の上を往復する。

何も言わずに、何も聞かずに。

涙に濡れた顔を上げると
玲の顔が間近にあった。

目と目が合うと
玲の顔が近づいてきた。

棗は無意識に身体を硬くして
目を伏せる。

濡れて冷えた目尻に
熱い唇の感触。

背筋に甘い電流のようなものが
走る。
さっきとは違う感じに
身体が震えた。

「お嬢様…」

熱い息が耳に掛かる。

強い力で抱き締められると
壊れそうなくらいに早く打つ
心臓の音が玲に
伝わりそうだった。