そのまま玲は棗の手を引いて
林の中を歩き始める。
わけがわからないまま
棗もつられて歩いた。

何でいつも都合よく
この男は出てくるんだろう。

制服姿に長いマフラーを巻いた
玲の後姿を見ながら考える。

「まさか、また見てたの?!」

思わず声に出して言うと、
何が?と玲は不思議顔で
振り返った。

慌てて、なんでここにいるの?
と質問を変える。

「この子を使ってお嬢様を
呼んだんだ。迂闊に入って
あの男に見つかっても嫌だし」

玲の肩に乗せられている
ティアラが甘えた声で鳴いた。

彼の正体がわかるの?と聞くと
まさかヴァンパイアとはね、
と玲が返す。
付け加えるように、
あいつも気付いてたよと言った。

「俺の弱点を知ってる女を
同業の男のところには
置いておけないだろ」

棗が足を止めたので
引っ張られるような感じで
玲も足を止めた。

「そんな事の為に来たの?
わたしは誰にも言わないわよ」

玲が小さく溜め息を吐く。

「お嬢様にその気がなくても
暗示にかかれば関係ないの」

不機嫌そうに顔をしかめた棗に
向かって言った。

「…ま、それだけじゃないけど」

小さく呟いて
玲は再び歩き始める。
棗を引く手にさらに力を込めた。