君の瞳に映る色

「わがままだな、君は。
それともお母さんに命令されれば
僕と大人しく寝るのか?」

頭で考えるより先に棗は
櫂斗の頬を叩いていた。

櫂斗の冷たい瞳が棗を見下ろす。

次の瞬間、棗は頬に
鈍い痛みを感じた。
同じように自分が頬を
叩かれたのだと気付いた時には
がっちり手首を掴まれ
シートに押し付けられていた。

「僕を叩くなんて、
お仕置が必要だな」

制服のリボンを無理やり外され
ブラウスを乱暴に引っ張られる。

止まっていたボタンが
四方に飛び散る。

車内に棗の悲鳴が響いた。



「櫂斗さん!やめてください!」

必死に名前を呼ぶが櫂斗は
聞こえないかのように
黙々と残ったブラウスのボタンを
器用に片手で外していく。

「やめて…、お願いします…」

懇願の言葉とともに
棗の瞳から涙が溢れた。

「あなたは会社を大きくする為に
この婚約をしたのでしょう?
だったらわたしのことはもう少し
待っていただけませんか」

必死に訴える棗を櫂斗は
眉を寄せて言う。

会社を大きくしたいのは
君のお母さんの方だろう、
そう言う櫂斗の目は
ひどく冷たい目だった。