君の瞳に映る色

裏門の前に櫂斗の車が
止まっていた。

スーツ姿の凛子がドアを開ける。
リムジンのように中は
向かい合わせで座れるシートに
なっていた。

先に棗を乗るように促し、櫂斗は
後から隣へ座った。
隅にいる棗を櫂斗は腕を掴んで
引き寄せる。

「授業が始まります…」

消えるような声で棗は呟く。
棗の言葉も空しく櫂斗の一言で
車は走り出した。

「東條さん…」

縋るように見ると櫂斗は
小さく笑いを漏らす。

「君も東條だろ?」

何も言えないでいる棗に
櫂斗は話を続けた。

「もう学校には行かなくていい」

棗は目を丸くして思わず、
「母に行けといわれています」
と、反論する。
櫂斗はそれを鼻で笑った。

「君はお母さんの言いなりだな」

ドクンと心臓が鳴る。

顔を近づけてくる櫂斗に棗は
前の座席の方へと視線をやった。
ガラスのようなもので空間は
仕切ってあるがこちらの様子は
丸見えだ。

「いや!」

叫びながら櫂斗の身体を
押し退けようとする。