君の瞳に映る色

20代くらいの目の前の女性は
黒のジャケットにパンツスタイル
長い栗色の髪は後ろで一つに
束ねられ使用人というよりも
秘書のような雰囲気だった。

彼女は棗の屋敷から一緒で、
女性達に指示していた所を見ると
上の立場の人間なんだろう。

何か?と、怪訝な表情で
聞いてくる。
目の前の女性の色も
同様に見えにくい。

女性ばかりですね、ここは。
と言うと女性は、
「男性は主しかおりません」と
答えた。

こちらです、と棗を促して女性は
歩き始める。

この屋敷の恐ろしさに
棗は震えた。
まともな話し相手などいない、
皆あの男の都合のいい人形だ。


長い廊下の窓は厚手の
カーテンが引かれていて
昼間だと言うのに薄暗い。
櫂斗は太陽が苦手なんだろうかと
ぼんやり考えた。

棗は3階の部屋に通された。
広さは自分の屋敷の部屋と
あまり変わらなかったが、
クローゼットがなく部屋の奥に
もう1つ扉があった。

衣裳部屋と言うので開けてみると
すごい数の服が両サイドに
掛かっている。
棚の上には靴やバッグが
置いてあった。
そのあまりの量に呆気に
とられている棗に後ろから女性が
声をかけた。