君の瞳に映る色

しばらく呆然と瑠璃を見ていたが
溜息を吐いて再び歩き出す。
瑠璃は慌てて追ってきた。

「…いやよ」

少し間をおいてきっぱりと
棗は言った。

明らかに不機嫌そうな様子で
棗は足早に歩く。
瑠璃との間にあっという間に
距離ができた。
怒らせてしまった事に気付いて
瑠璃は追いかけるのをやめて
立ち止まった。

棗は、今度は止まらなかった。

瑠璃は呆然と棗の後ろ姿が
消えていくのを見ていた。


色が見えることは
楽しい事じゃないと棗は
言っていたのに。

自分のことばかり考えて無神経な
お願いをした事に気がついた。
やっぱりわたしはだめだな、
そう思って俯くと涙が
出そうだったが必死に堪えた。

せっかく少しずつでも
話せるようになったのに、
呆然としながら瑠璃は思った。