君の瞳に映る色

棗の意識が次に戻ったのはもう
夜も更けたころだった。

食器の微かに当たる音に
棗は瞳を開けた。

横で柊が食事の準備をしていた。
学校に行ったはずなのに、と
朦朧とする頭で考えた。

柊に話しかけるために身体を
起こすと柊も棗が起きたことに
気付いた。

「お加減はいかがですか?」

穏やかな柔らかい声で柊は聞く。
何か言いたげな棗に柊は
学校からの連絡で棗を迎えに
行ったことを伝えた。

「非常に心配されていましたよ、
この前のお嬢様が」

瑠璃のことを言っているのだと
気づきおぼろげな記憶で瑠璃が
付き添ってくれていたのを
思い出す。
温かな感情が心を満たすのを
棗は感じた。

ぐっすり寝たからか身体はまだ
重いものの頭痛はだいぶ楽に
なっていた。

柊から受け取ったリゾットを
食べ終えると棗は再びベッドに
横になった。

菖蒲は仕事が長引きそうな
雰囲気だと柊が言っていたので
明日1日くらいは
ゆっくりとできるかもしれない。


電気を消した暗い部屋に
月明かりが差し込み窓枠の影を
床に作り出していた。