白い墓標に、花を添える。

 三日後。やっと時間を取った二人は、王城から抜け出していた。無論、公的なスケジュールを組んで、だが。

 ホーレスト子爵家の、墓。新しいものは、洸流の父と母。そして――その横の、小さな墓標。

 遺体の無い三つの墓の前で、二人は無言で立っていた。やがて、どちらからともなく、その場を立ち去る。

 第九期壱号機は、悠夾と名づけられた。圧倒するスペックは、ただ人々を驚かせ――同時に、第九期全体に付けられた名も、話題を呼んだ。

 通称――ファイクリッド。ミルドレインが送ったその名は、フェルキンド王家の悲願とも言えた。






 そして、帝国歴四六四八年。賢王と呼ばれた伯母・ミルドレインの後を継いで即位した、ガレーネル。伯父と呼ばれる筈だった人物の名を与えられた、その王の即位したその年が、ファイクリッド歴元年となった。


【完】