そのベッドにめがけて、律は手に取ったものを投げた。


「プレゼントよ」
 
それだけ言うと、引き出しを閉め別の引き出しからファイルを取り出して、書類の整理を始める。
 
見なくても、芹が投げたものを受け取り、再び大きなため息をついたことがわかった。


「嫌がらせ?」

「物分かりが良くて助かるわ。それあげると、貴方みたいな人二度と来ないから。効果あるのよ」
 

視線を書類に落としたまま、ボールペンを走らせながら答えると足音がこっちに近づいてくる。

デスクの前に影が出来たが、それでも律は視線を書類から動かさなかった。
 

その書類の上に置かれる、律が投げたもの。


「言われなくても、避妊ぐらいしてる。遊びで子どもが出来るとか、面倒」

「なら結構。遊びだろうが本気だろうが、覚悟が出来るまでそうしてなさい」
 
今までになく、低く冷たい言葉を発した芹だったが、律は視線を上げずに淡々と返す。

 
しかし、芹の雰囲気が変わったことは気が付いていた。

先程までのちょっとふざけた雰囲気とは違う。
 

おそらく、またしても瞳は虚無を抱えているのだろう。

 
そう感じ取ったからこそ、律は尚更視線を上げなかった。

置かれたものを避け、書類に目を通す。