保健室アイロニー[短篇]

彼が学校一の秀才であると共に、女子生徒どころか女性教師からも人気があることぐらい律だって知っていた。
 
勉強が出来て、スポーツも適度にこなし、何よりも丁寧で優しい。

誰にでも平等に接し、目上の者に対する礼は忘れない。

 
そんな嘘みたいに出来すぎた男は、嘘みたいに人気があった。

律から見たら、どうしてそこまで好かれるのかがわからない。

 
見た目も良くて、性格も全て完璧なんて少女漫画の世界でしかない。


 
みんなに好かれる条件。

それは、本性を隠せること。

 
そういう持論を律は持っていたし、あながち外れたこともなかった。

第一そういう人間は一部を除いて、何かしら暗い経験をしたことがある可能性が高い。
 
もう嫌われたくない。だから自分を隠し続ける人もいる。

 
ただ、これは律の直感だったが、芹はその逆。
 
どこか周りを蔑んで見ている、そんな気がしていた。


「ああ、念の為言っておくと、彼女じゃないから」
 
ネクタイもきっちり締め直して、笑いながらあっさりと芹が言う。
 

そうでしょうね、と心の中だけで律は相槌を打った。

あれが彼女なら、あの時一緒に保健室を出て行っただろう、と。
 

貧血だと言って女子生徒が一人で来ていたから、あらかじめ待ち合わせしていたのか、芹が入ってきて寝込みを襲ったのかはわからない。