その顔は明らかに教師といった感じで、でもどこか暖かい目をしていた。


「そんなことって、簡単に言うけど」

「和菓子屋なんて、太りそうだけど」

 
またしても芹の言葉を遮るように言う律の声は、淡々としたいつもの声。
 
意味がわからず、きょとんとしてしまった芹に律は優しい笑顔を向けた。



「貴方の家の和菓子、大好きなのよ、私」

「え?」

「セックスから始まる愛なんて、不埒だと思う?」

 
微笑みながら言う律の意図を、ようやく理解した芹は笑顔を浮かべてしまう。


「保健医と生徒ってことだけで、充分不埒だと思うけど」

 
そう言いながら芹は再び律の身体を腕に収めた。
 
思いの外柔らかい身体に安心感を覚えながら、そっと自分の唇を律の唇に落とす。


 
止まない雨は、ずっと静かな音を立てていた。



【Fin.】