「私が教師で、貴方が生徒だからよ」

 
窓ガラスに映った律を見て、芹も苦笑する。



「辞めたらどうすんの? ってか学校辞めたって変な噂付きまとうと思うけど」

「仕事なんて、選ばなきゃ幾らでもあるのよ」
 

芹の質問に律はいつものちょっとつんとした表情で答える。
 
その顔を見て、芹は律の肩を後ろからそっと抱きしめた。


「じゃあさ、俺んち来たら? 人いないんだ。売るの手伝って」
 
囁くような声で言うも、それはいやらしさを含まない、純粋な声だった。


「和菓子屋? 私が販売に向いていると思う?」
 
後ろから柔らかく抱きしめられたまま、律は相変わらずの調子で言う。


「仕事、選ばないって言ったし」
 

芹がそう言うと、律は少しだけはにかむ。
 

窓ガラスに映ったその表情が妙に愛おしくなって、芹は腕に力を入れた。



「ねえ、先生。セックスしよう」


 
囁くように、それでもはっきりと言った芹の言葉に、律は素直に破顔する。


「ここは学校よ?」

「知ってる。でもどうせ今月でいなくなるんでしょ?」

「性欲処理に使われるのはごめんなんだけど」
 

律がそう言うと、芹は律の右肩に右頬を乗せた。