「でもさ、歯ブラシが二つだなんて誤解されたらどうすんだよ? あ、それともそれが狙いか」
少しふざけて言い返してみると、今まで無表情に近かった律の顔が微笑みに変わった。
不覚にもその微笑みに一瞬目を奪われてしまう。
「残念ね。私今月一杯で辞めるのよ。誤解されても噂も広まらないかもね」
「は……」
律の微笑みが崩れることはなく、崩れたのは芹の気持ちだった。
暫し、沈黙が続く。
「辞めるってまさか雑誌の……」
思わず言ってしまったことを芹は後悔したが、律はああ、と頷いた。
「知ってるなら話は早いわね。一応辞職っていう形にはなるけれど、実際は追い出されるのよ。まあ、それ以外にも理由はあるんだけれど」
とんでもないことをどうしてそうさらっと言ってのけるのか、芹には不思議でもあったし、現実味を帯びてくれなかった。
「って、あの写真、本当に」
「ええ、私よ。別れたときにネガまで回収したつもりだったんだけど、温かったみたいね」
「いや、だってなんで」
「さあ、大方お金にでも困ったんじゃないかしら。教職試験にも落ちたって言っていたし。あんなのが教師じゃ生徒が可哀想よね」
律がね、と笑っても芹には笑うことが出来なかった。
初めてこんなに長く律の笑顔を見たのに、それがとても悲しい気持ちを運んでくるだなんて思ってもいなかった。
少しふざけて言い返してみると、今まで無表情に近かった律の顔が微笑みに変わった。
不覚にもその微笑みに一瞬目を奪われてしまう。
「残念ね。私今月一杯で辞めるのよ。誤解されても噂も広まらないかもね」
「は……」
律の微笑みが崩れることはなく、崩れたのは芹の気持ちだった。
暫し、沈黙が続く。
「辞めるってまさか雑誌の……」
思わず言ってしまったことを芹は後悔したが、律はああ、と頷いた。
「知ってるなら話は早いわね。一応辞職っていう形にはなるけれど、実際は追い出されるのよ。まあ、それ以外にも理由はあるんだけれど」
とんでもないことをどうしてそうさらっと言ってのけるのか、芹には不思議でもあったし、現実味を帯びてくれなかった。
「って、あの写真、本当に」
「ええ、私よ。別れたときにネガまで回収したつもりだったんだけど、温かったみたいね」
「いや、だってなんで」
「さあ、大方お金にでも困ったんじゃないかしら。教職試験にも落ちたって言っていたし。あんなのが教師じゃ生徒が可哀想よね」
律がね、と笑っても芹には笑うことが出来なかった。
初めてこんなに長く律の笑顔を見たのに、それがとても悲しい気持ちを運んでくるだなんて思ってもいなかった。



