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続いた雨のせいでベッドの布団が干せないことに悩んでいると、ドアの前に誰かが立ったのがわかった。
 

磨りガラス越しに背の高い男が立っているのが見える。

ジャケットでもなく、ブレザーでもなく、白いシャツが見えることから律は芹が来たことに気づいた。

 
だが一向にドアは開かない。
 
ただ、ドアの前に立ち尽くしている。

 
律は目を瞑りため息をつくと、ヒールをわざと鳴らしてドアまで歩いてゆく。
 
そして一気にドアを開けた。


「ドアの前に突っ立ってるだなんて、迷惑になることぐらいわからない?」
 
案の定立っていた芹に対し呆れたように言うも、ただじっと見つめてくるだけ。

 
何かあったのか。

 
そう感じ取りもう一度ため息をついたところで、芹が自ら律の横を通り保健室に入ってきた。

そのままいつも座っていた椅子に腰を落とす。
 

だが何も言葉を発さない。
 
呆けているわけでも、上の空というわけでもない。