保健室アイロニー[短篇]

律がああ、と頷いてからポットの横の瓶の蓋を開ける。

「いくつ?」
 
聞かれるということは角砂糖か、と気づきどうしようか迷ったもののここも正直に芹は言うことに決めた。


「……三つ」
 

俯き加減で言ってみたものの、律が固まっているのが芹にはよくわかった。
 
恥ずかしいというか気まずい思いにやり切れなかったが、言ってしまったものはどうしようもない。
 

顔を上げ、律と目が合うった瞬間。


 
律が笑った。


 
いきなりのことに芹は呆気に取られてしまう。
 
いつものように嫌味のような言葉を投げかけられると思っていた。
 
しかし律は笑っている。
 

芹は初めて律の笑顔を見て暫し呆然としたが、笑われていることも特に良いことではないと思い、むっとした表情を作った。


「悪かったな、甘党で」
 
角砂糖の入った瓶を持ったまま小さく笑い続ける律に、ぶっきらぼうに言ってみる。


「いえ、ごめんなさい。まさか三つとは思わなくて」
 

笑うのを抑えて、律が瓶をこちらに持ってきたので角砂糖を三つ取って芹は自分のマグカップに入れる。

すぐにスプーンも渡してくれ、それでむすっとしたままかき混ぜるも、まだ律は微笑んだままだった。