保健室アイロニー[短篇]

   *


締め切られていた保健室は、消毒液の独特の匂いが充満していた。
 
先に入っていった律が窓を開けると、雨の匂いが吹き込んでくる。
 

棚から真っ白なタオルを取り出すと、律はそれを芹に無言で手渡した。
 
芹も特に言葉を発せず、受け取って頭を拭く。
 
律が白衣を脱いでハンガーにかけ、芹の方に手を出す。


「ブレザー」
 
素っ気無くそれだけ言うので、芹も水分を吸って重くなっていたブレザーを脱ぎ、はい、とだけ言って渡した。
 
それも手早くかけてしまうと、今度はすぐにマグカップを用意し紅茶を入れ出す。

 

無言でなんでもこなしていく律を、芹は黙って眺めていた。

 
紅茶の香りが漂いだすと、律はジェスチャーで芹に椅子に座ることを進める。

素直に芹が座ると、律はマグカップを手渡してくる。


 
何もかもが、淡々と進む。


それが芹にはどこか心地よく、居心地が悪かった。

 
矛盾した感情が、妙に自分をそわそわさせる。
 
受け取ったマグカップは熱かったのに、雨で冷えた体には丁度良く感じられ、口をつける。
 

が、すぐに飲むのを止め、渋い表情になってしまった。


「……砂糖」
 
その表情をしっかり見られていたようで、芹は多少気まずい思いをしたが、正直に言うことにした。

暖かい飲み物は欲しいが、ストレートの紅茶は飲めない。