それは嫌味のたっぷりこもった微笑み。


「寝不足の頭痛っていうことにしておきましょう。他の人たちはきっと勉強頑張ってるのね、って思ってくれるでしょう」
 

明らかに小馬鹿にした言い方に、芹はちょっとムッとしてしまう。
 
律自身がそう思っていないことは、聞かずとも言葉の端々から嫌というほど伝わってくる。
 

それでももうどうでも良い気分になっていた。
 
きっと何を言おうが律には効かない、困らせてやるのも面白いかと思ったが、段々と面倒な気持ちになっていくだけ。
 
ただ出て行くにもまだ授業中、今戻ったところでタイミングが悪い。
 

名前も書いたしとりあえず寝ていくか、と芹はベッドに向かい、自分でカーテンを閉めた。

ブレザーを脱いでたたみ、足元の籠に入れてからベッドに潜り込む。

 

頭痛はしないが、寝不足なのは本当だった。
 

皆が使っているベッドは居心地が悪い気もしていたが、考えてみればあまりこの保健室に人は来ない。
 
それによく言うおひさまの匂いが、芹の心を落ち着かせてゆく。
 
合わせて消毒液の匂いばかりの部屋に、土の匂いと紅茶の香りが漂い始めた。

 
どこかほっとするような空気に眠気が増してゆき、芹はゆっくりと瞼を閉じた。