保健室アイロニー[短篇]

しかしその色気は何故か悪い噂ばかりを生んでいた。
 
真偽なんかどうでも良かったが、もし噂どおりの教師なら、簡単にやらせてくれるかと思って昨日は押し倒してみただけだった。
 

ところが芹は苦汁ばかりを舐めさせられている。

 
簡単に堕ちないのは、所詮噂ということか、自分がただ嫌いなだけか。

 
口をゆすぎながら、芹はそんなことを考えていた。

同時になんとなく思いついたことを実行してみる。

 
律の歯ブラシの横に、自分が使った歯ブラシを挿す。

 
たったそれだけのこと、特に何も言わず芹はまた椅子に戻り座ったが、なんとなく気分を持ち直せた気がしていた。
 

特に意味はない、そう芹は思っている。



「というかさ、普通煙草を吸っていることに対して怒らない?」
 
すぐ出て行く気にもなれなかったので、芹は何気なく尋ねてみた。

未成年の喫煙が犯罪だということぐらい勿論知っている。
 

ただ自分が喫煙者であることは家族にすら知られていないことだった。

知られたら父親は怒るか、と言われたらいまいちわからないが、それでも普通の大人、それも教師ならば注意するのが当たり前だろうと思う。