そしてすぐにこちらに向き直り、昨日と同じ冷たい視線を投げかけてくる。


「ここは病人、怪我人が来るところ。そうでなければ入らないで頂戴」

 
正直、芹はその冷たい視線が気に入っていた。
 
自分にその様な瞳をする人間は他にいない。
 

だからその蔑んでいるわけではなく、ただ熱を持たない瞳で自分を見つめてくる女を、どうにかして困らせてやりたかった。

 

ふっと小さな笑みを溢すと同時に、芹は保健室に足を踏み入れ後ろ手にドアを閉めた。

そのまま流れるような動きで律の顔の高さまで屈み、頭を傾けてそのぽってりとした唇に自分の唇を被せる。
 

唐突な行動にさすがに律は面食らったのか、抵抗はされなかった。

ならば、と口内を犯そうと唇を舐め、緩んだ唇の隙間から下をねじ込んだ。
 

しかし、足の痛覚が脳に信号を送ってきた。

 

さすがにその抵抗というか攻撃に驚き、芹は唇を離して律の顔を軽く睨んだ。
 
だが律も負けじと芹の顔を睨み返してくる。
 

しばし睨みあい、その場を動かず、二人はお互いに冷たい視線を投げかける。