世の中は嫌煙ムードなのに、煙草の匂いが染み付いた職員室。


芹は担任に呼び出されてここまで足を運んでいた。

担任の席まで向かう途中、幾人かに呼び止められひどく時間を食ってしまった。

 
呼び出された理由は簡単、進路のことだ。

芹はこの話をもう何度しただろうとため息をつきながら、何度と無く伝えてきた台詞を再び口にした。
 

同じことの繰り返し、去年の夏からずっとこの会話が繰り返されている。
 
さすがに飽き飽きしてきたし、いい加減わかって欲しい気持ちで芹はいっぱいだった。

 
途中他の先生も間に入り、話がどんどん長引いていく。
 

いつの間にか昼休みは終わりに近づき、チャイムがなったところでようやく担任に解放された。
 

もう気持ちは疲れ果てていたが、丁寧に担任に挨拶をし、またドアに向かうまでに幾人かの教師とも挨拶を交わし、職員室を出る際に時計を確認すると五限目ももう十五分程過ぎていた。
 

一礼しながらドアを丁寧に閉めると同時に大きなため息をつく。


「失礼します」
 
同時に昨日散々なことを言ってくれた声が、芹の耳に届いてきた。声の方向に首を向けると、やはりそこには律の姿がある。
 
深々と頭を下げていたのをゆっくりと起こしながら、ドアノブに手をかけて静かにドアを閉めていた。