由香里の実家の「ときわ旅館」は、落ち着いたたたずまいの温泉街の一角にあった。町のあちこちから湯けむりが上がり、浴衣を着た泊まり客の下駄の音が石畳にこだまする。何とも風情を感じさせる所だった。
二人が旅館の門をくぐった頃は、夜も十一時をまわっていたが、いかにも人のいい由香里の両親は、二人を暖かく迎えてくれた。
次の日から京介の小笛探しが始まった。
『まず、骨董屋関係、それから寺だ。』
京介はその地方の電話帳に載っている古美術商や寺を片っ端から洗い出しては、旅館の車を借りて訪ねてまわった。だがそれらしき物は見つからないまま、探しはじめて三日目の夜を迎えた。
『何としても小笛を見つけださねば・・・』
京介には悲壮な想いがあった。気持ちを新たに八畳の和室へ戻ると、また、電話帳と地図を手に、明日まわる所を片っ端から調べていった。
「失礼します。」
そこへお茶を持って由香里が入ってきた。旅館の女将風に衣服と髪を整えた姿が似合う。
「ねえ、明日阿蘇神社でお祭りがあるんだけど行ってみない?」
「うん。」
京介は、うろ返事しながらも、電話帳と地図と格闘していた。
二人が旅館の門をくぐった頃は、夜も十一時をまわっていたが、いかにも人のいい由香里の両親は、二人を暖かく迎えてくれた。
次の日から京介の小笛探しが始まった。
『まず、骨董屋関係、それから寺だ。』
京介はその地方の電話帳に載っている古美術商や寺を片っ端から洗い出しては、旅館の車を借りて訪ねてまわった。だがそれらしき物は見つからないまま、探しはじめて三日目の夜を迎えた。
『何としても小笛を見つけださねば・・・』
京介には悲壮な想いがあった。気持ちを新たに八畳の和室へ戻ると、また、電話帳と地図を手に、明日まわる所を片っ端から調べていった。
「失礼します。」
そこへお茶を持って由香里が入ってきた。旅館の女将風に衣服と髪を整えた姿が似合う。
「ねえ、明日阿蘇神社でお祭りがあるんだけど行ってみない?」
「うん。」
京介は、うろ返事しながらも、電話帳と地図と格闘していた。