「お待ち下さい。」

 宗純は突然駆け寄ると、掛け軸に手をかけた円心の肩をつかんだ。

「渡してはなりません。」

 宗純は自分でもなぜそのような行動に出たのか分からなかった。今までおさえていた感情が一気に吹き出した。

「ばか者。無雲殿に対して無礼であろうが。」

 円心のにこやかな顔は一変し、紅潮するのがわかった。円心の一喝でたじろいでしまった宗純はそれ以上どうすることもできず、つかんでいた手を離した。

「無雲殿、恥ずかしいところを見せてしまいましたな。勘弁して下され。」

 円心はそう言いながら、掛け軸を壁から外すと、くるくると巻き始めた。