ボールはやがて勢いを失い、今度はコロコロ転がって、誰かの足に当たって動きを止めた。


　その人は、自分の足元のボールを拾い上げた。


　背が高く、細身だが逞しい、革のジャケットにＧパン姿、色の濃いサングラスをかけたその人は、普通の人じゃないと一見してわかるほど、ものすごいオーラをかもし出していた。


　そのオーラはまるで…ハリウッドスターのそれに似ていた。


　いや、それ以上だったかも…


　ボールを追って走ってきた悠斗に、彼は拾ったボールを渡し、しゃがんで悠斗に自分の目線の高さを合わせるとサングラスを片手で外した。


「名前は？」


　彼は優しく微笑んで尋ねた。


「ゆうと」


　悠斗はそう答え、彼の顔を見詰めた。


「ゆうとくんかぁ…いくつ？」


「４歳よ!!」


　慌てて走って来た母が、答えようとする悠斗を遮って答えた。