追憶のマリア

 ふと彼女に目をやると、そんな俺を彼女は、黙って悲しげに見詰めていた。


 彼女の優しい眼差しに、俺の心は癒され、俺は冷静さを取り戻すことができた。


 ビルの中へ続々と警官達が流れ込んで来る気配が下からした。


「窪田…川嶋を撃つな!!部隊が到着するまでそのまま待て!!」


 青山さんが無線機から必死で訴える。


「けど…彼女が…」


 この期に及んで、俺はまだ彼女の心配をしていた。


 青山さんの下す判断なんか、容易に想像がつくのに…


 案の定、青山さんは、


「川嶋は重要な情報を、膨大な量握っている。なんとしても生かして捕らえるんだ。彼女のことは…残念だ…。」


 申し訳なさげに言った。


 きっと青山さんの判断は正しい。


 今までもそうだった。


 けど俺は、そんな青山さんに腹が立った。


 なんとかして彼女を助けたかった。


 俺は未だかつてないほど、脳みそをフル回転させた。








 れんも警官が押し寄せて来るのを気にして、ヘリに向かって、もっと近くへ寄るように腕を大きく振って合図した。


 そしてヘリから垂れ下がったはしごが手に届くほど近くへ来ると、れんは、彼女に向けていた銃口を瞬時に俺に向け、そして引き金を引いた。


 俺はその瞬間、『殺られる…』と同時に、『やっと楽になれる…』とも思った。