積荷をすべて降ろし終えると、男は再び漁船に乗り込み、そして漁船は真っ黒な海の中へと吸い込まれるようにして消えた。


 最後の荷を持ち上げたフォークリフトの後を追うように、俺も倉庫内へ入った。


 俺は唖然とした。


 倉庫内にはものすごい数の、黒塗りのセダンが所狭しと並べられていた。


 そのうちの1台のトランクに、茶色い紙で包まれた四角いモノは、数人の男達によってどんどん積み込まれていった。


 そのかたわらに、れんがいた。


 俺はれんに近付き、


「何なんだ?これは…?!」


 と、うるさいほどの黒を見渡しながら言った。


「どうせ今頃サツが囲ってんだろ?」


 れんはそう言って不敵に微笑んだ。


「だとしたら…どうすんだ?」


 俺はしらを切り通した。


「見てろ。」


 れんは得意げに言い、倉庫の入り口にいる奴等に、右手を頭上に掲げ合図した。


 れんがまだ俺を疑っていないらしいことに胸を撫で下ろし、俺も倉庫入り口に目をやった。


 倉庫の扉がゆっくり全開まで開かれた。


 その瞬間、倉庫の目の前から、眩しいほどの光が放たれ、大勢の特攻部隊が暗闇の中に浮かび上がった。


 だが、倉庫内の無数の黒塗りセダンは、そんな包囲網などお構いなしに次々と倉庫を飛び出して行った。


 包囲していた警官達も、予想外の車の数に戸惑いを見せたが、障害物などないかのように、躊躇なく突っ込んで来る無数の車を避けながら、皆必死に銃を発砲した。


 タイヤに弾が命中し、横転する車、それに何台か避けきれずに激突し炎上。


 そんな光景があちこちに見られ、辺りは騒然とした。