4日後、取引当日。






 今日、すべてが終わる。


 明日から彼女は晴れて自由の身だ。


 出掛ける直前、ふと、俺は彼女のことを想い、玄関から引き返して寝室のドアを開けた。


 ベッドサイドの棚の上で、何かを書いていた彼女は、驚いて俺を振り返り、書いていた紙と鉛筆を、棚の引き出しに慌てて隠すように放り込んだ。


 何をしているのか、少しだけ気になったが、もう彼女とはこれきりなので、追及するのはやめておいた。


 俺はただ彼女を見詰めた。


 彼女は俺に、していたことを問い詰められるのではないかと思ったのだろう…


 不安そうに俺の顔色を窺っていた。


 俺は部屋の入り口に突っ立ったまま、しばらく彼女を凝視して、彼女の顔を頭の中に鮮明に焼き付けた。


 彼女の顔は、これで見納めだと思った。


 あまりに長い沈黙に、耐え切れず彼女が口を開いた。


「どうかしたの?」


 俺はその声も耳に焼き付け、


「別に何も…。」


 そう言いながら身をひるがえして部屋を出た。