追憶のマリア

 俺は藤堂を椅子に縛りつけ、必死で命乞いする藤堂に、“ビジネス”は信用第一だのなんだのと、どうでもいい説教をした。


 それから、再び藤堂に銃口を向けた。


「頼む、お前の欲しいもの何でもくれてやる。だから命だけは助けてくれ…。」






 ほんとにコイツはムシケラだ。


 自分を守る為に雇われたヤツラが、全員目の前で殺されたってのに、この期に及んでまだ自分だけは助かろうとしている。


「俺が殺らなかったとしても、あいつらはどこまでもお前を追うさ。れんは裏切りを絶対許さねぇ。」


 藤堂の顔から血の気が引くのが、はっきり見て取れた。


 いい気味だ。


 俺は銃を構えたまま、死の恐怖に怯える藤堂をしばらく眺めた。


 それから、フッと全身の力を抜き、と同時に銃をおろした。





「もうすぐここへ、サツが来る。ムショ行って、お前が知ってること全部話せ。そしたらお前は、今ここで死んだことにしてやる。けど吐かないなら…あいつらに、地獄の果てまで追われて死ね。」


 俺は藤堂に許された選択肢を淡々と述べた。


 その言葉には何の感情もない。


 俺はただ単純に、任務を遂行するだけだ。






「お前…いったい何者だ?」


 裏切った自分を殺しに来たと思いきや、一転して警察で洗いざらい吐けと要求する俺に猜疑心を抱き、藤堂は尋ねた。