追憶のマリア

 れんは、そんな俺の手を振り払い、


「お前だけ行け。」


 と覚悟を決めたように言った。


 確かに…れんを連れて脱出しようとすれば、確実に二人とも捕まる。


 そんな選択をするのはあまりに不自然だった。


 俺は任務遂行を諦め、一人その場を去った。







 れんは最寄の市民病院へ搬送された。






 俺の上司の青山さんは、50代半ばの人の良さそうな男で、一見どこにでもいそうな普通のオジサンといった風貌だた。


 だが彼の下す判断は、常に迅速で確実だった。


 青山さんは俺に、入院中のれんに見張りを付けず、わざと逃がしてさらに泳がすと言った。


 だが、恐らく見張りがないのを不審に思ったんだろう。


 れんは保険に、その病院の看護師を拉致して連れ帰った。