追憶のマリア

「『れん』って呼ばれてる。聞いたことないか?」


笑顔だが目は笑っていなかった。


 もちろんそんな名は偽名だろうが、特捜部の間でも『れん』、または眩いほどの金髪から、『ゴールドヘッド』と呼ばれていた。


 俺は無愛想を崩さず、


「知らねぇーな。」


 と吐き捨て、またれんから視線を外し、前を向き直った。


「そぉか? 俺の名前、結構売れてると思うんだけどな…」


 そんな俺の不愉快な態度にも、全く腹を立てる様子のないれんから、よほど俺を利用したいんだと悟った。


 俺はそんなれんの言葉など無視して、ロックグラスのアルコールを一気に喉へ流し込んだ。


 れんは俺の飲み干したグラスをマスターに向かってトンと差し出すように置き、


「同じものを。」


 と言い、俺の方へ身体ごと向け、


「なぁ、頼みたい仕事があるんだ。」


 と続けた。


 俺はタバコを口へ持っていき、可能な限り吸い込むと、大量の煙を吐き出した。


 そして煙たそうに顔をしかめてれんを見やり、


「うざいんだよ。消えろ。」


 と、めんどくさそうに吐き捨てた。