追憶のマリア

 そんな俺を、凝視して観察する黒岩。


 疑われたら終わりだ。


 ビル爆破阻止も…テログループ一斉検挙も…


 沈黙を破って京子が叫んだ。


「利用されてたなんて…『愛してる』って言ったじゃない!『幸せにする』って言ったじゃない!あれは全部嘘だったの?」


 京子の迫真の演技。


 俺は覚悟を決めて、京子の芝居に乗っかった。


 俺は手にしたオートマチックの銃口を京子のこめかみに当て、安全装置を外した。


「ばかかお前…俺がお前みたいな年増女に本気になるわけないだろ?」


   『愛してる京子』


 地獄に落ちろと、京子が俺に向かって唾を吐いた。


「じゃあな、刑事さん。」


   『俺のすべてを懸けてお前を
    愛してる』








 俺は引き金を引いた。







 俺は…何十万の命より…何億の命より…世界中の生きとし生けるものすべての命より大切な、たった一つの命をこの手でうばった。


 俺は不死身だったけど…俺の愛する人は不死身じゃなかったんだ。


 『何10万の命が俺に懸かってるんだ。』


 俺のバカなおごりが、京子の未来を奪った。


 愚かな俺…間抜けな俺…





 俺は誰も愛しちゃいけなかったんだ。