追憶のマリア




 京子だった。




 京子の顔はアザだらけで腫れ上がり、あの美しい輪郭は見る影もなかった。


 はだけた服はところどころ汚れと血で滲んでいた。


 思わず目を覆いたくなる光景に、俺の心は泣いた。


 けど目をそらさず、平然と京子を見続けた。


 心を痛めてることを、奴らに悟られる訳にはいかなかった。




「お前の女、刑事だってなぁ?」


 黒岩が冷ややかに言った。


「お前まさか…警察の犬じゃねーだろーなぁ?!」


 俺はフンッと鼻で笑い、


「冗談だろ??情報得るために利用しただけだ。」


 と必要以上に落ち着き払って答えた。


「じゃぁ…」


 と黒岩は俺に近付いて、俺の背中のオートマチックを抜き俺の右手に握らせ、


「殺せ」


 と耳元で囁いた。


「まだ利用でき…」


「こいつは何も吐かねぇよ。」


 黒岩が俺の言葉にかぶせてきた。


「散々痛めつけたけど何も吐かなかった。」


 そう言って右口角を上げて不敵に微笑んだ。


 俺は愕然とした。


 俺のせいで京子は…


 京子を助ける方法が浮かばない…


 30万人の命と、京子の命、両方救う方法がどうしても見つからない…