追憶のマリア

 窪田はリビングのソファーに腰掛け、いつものように慣れた手つきで念入りに銃のチェックをした。


 愛用のオートマチック、グロック17に異常がないことを確認すると、それをGパンの後ウエスト部に差し込んだ。


 そして立ち上がると上着を手にし、玄関に向かって歩きながらそれを着て、いつものように颯爽とアパートを出て行った。


 ほんの少しだけ打ち解けた気がしたのに…


 窪田はまた、母に何も告げず黙って出掛けて行った。


 『打ち解けたと感じたのは、私の思い上がりだったかな。』


 母はそう思って心が痛んだ。


 それに、また大怪我して帰って来るかもしれない…


 もしかしたら生きて帰って来ないかも…


 そんなことを考えてしまい、母の心は不安で押しつぶされそうだった。







 1時間もしないうちに、玄関のドアが再び開いた。


 母は窪田が無事に帰って来たと思い、期待を込めて玄関を見た。


 そこには窪田ではなく、れんが立っていた。


 れんは母を見て不敵な笑みを浮かべ


「旦那がいなくて寂しいだろ?」


 と言い、ゆっくり母に近付いた。


 母もそれに歩を合わせるように、ゆっくり後ずさりした。